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■追われる俺と追う私

前に壁がある。右と左、どちらに行けば…。

時間が無い、時間が無い、どうしよう。

どちらが良いのか、考えている余裕は無い。仕方ない。この際曲がるのが得意なほうで良いか…。

あ、俺って両利きなんだよな…いいや、右でもう踏み出しているし。

半分あきらめながら、俺は曲がった。

今、俺は人に追われている。

それが誰かって?それは知らない。

ただ、俺がその家の前を通過しただけで、切りかかってきて、そして、追いかけてきたのだ。しかも、そいつらは「まて、生贄〜!」と言いながら追いかけてきた。
さすがに、その時はなんかの冗談だと思っていたが、本気で追っかけてくる様子から本気なんだと一瞬で悟った。

―― これは危ない。ここにいては殺させる

確信していた。いや、誰だって分かるだろう。黒ずくめでサングラスなので表情はつかめないが、スタンガンやナイフを構えてあんなふうに叫んで走ってくれば。
あるいは一瞬、自分じゃないと否定するかもしれない。
だが、周りには自分しかいないので、他はありえなかった。つまり、明らかに自分、俺を狙ってきている。
ただ、俺が他の奴等と違っていた点はここで足がすくまずに逃げられた点だ。

―― 足が竦まない

それは、恐怖に対して耐性があるということになる。生憎、俺は“去年まで”は、いじめられっこの分際だったので、恐怖に慣れきってしまっていた。
ただ、やっぱり、死の恐怖には勝てないようだった。そうでなければ、もうこの時点でとっくに死んでいる。というか、今は楽しくてしょうがない高校生活送っているのに死ねるわけがない。

右に曲がってもう、400メートルぐらい過ぎただろうか。黒い人影はもう向こう側に小さくなってしまっていた。

「に、逃げ…、っきったか…。甘く、見る…なよ、現役…陸、上選手を…。」


「何が逃げきった、よ。今何時だと思っているの? もう、とっくのとうに昼よ。」

…なんだって?

一気に現実に戻される。
というか、さっきのは夢だったのか。後から思うが、俺は相当必死だったらしい。その証拠にベットのシーツがぐっしょり汗で濡れていた。

って、ことはさっきのは…、一体…。

って、今日は学校じゃなかったかッ!?

バサッ!

ベットから勢い良く飛び出し、制服に支度をしようとする。

だが…、

「あきれたわ。今から着替えるなんて。もう、学校、とっくに終わってるわよ。だって、もう、4時過ぎだもの。それとも、アンタ今から学校に行くつもり?」

…マジですか。あぁ、今日折角部活があった日なのに、無断で休んじゃったよ。
折角、今まで無遅刻、無欠席、無サボりだったのにな。
この際だ。とりあえず、今課題ややることも特に無かったはずだから、今日は今日をゆっくり楽しもう。

よし、折角だから、着替えて散歩でもして行こうか。あ、久しぶりに姉ちゃんを誘うのも良いかもな。もう、日は西に傾き始めてるけど。

「ねぇ、姉ちゃん。ちょっと、聞いていい?」

「え?な、なに?」

「今日これから暇?なんか、俺からだが鈍っちゃってるから、気晴らしに散歩でも…、一緒にいかない?」

「な、何、突然…。…。べ、別に…、良いわよ…。どうせ…暇だったし。」

なんか、ぎこちない気もしなくも無いけど、とりあえず、問題なくてよかった。
ああ、楽しみだなぁ。久しぶりの姉ちゃんとの散歩だからな。

そう考えているうちに、いつの間にか風呂からシャワーの音とシャンプーの良い匂いが流れてきた。

「ああ、これも久しぶりだな…。」

そんな、独り言をつぶやく。
本当に楽しみだ。
俺は、未だ時間を掛けてシャワーを浴びている姉を待ちながら…、流れてくる香りを楽しんでいた……。

The END

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