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■ALPHA-GATE

イントロダクション
プロローグ
1/時間を超える機械
2/失敗とその成果
3/不明な世界
4/一人の少年
5/私に似た女
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■イントロダクション / Introduction

―― 私何やってるの…?

 今が何時なのか私には分からない。それどころか、今自分がどれぐらいの年月ここに居るのか、自分自身の存在が何なのかも分からない。分かるのは今が今で無く、今居る場所は今居た空間ではないということだ。

―― 四次元空間

 ここのことを人々はそう呼んだ。普通に生活していては絶対に出会えない、縦と横、高さ、更に時間までが軸に加わった空間。その中では、時間使うことで膨大な容積をわずかな量の体積で可能とする。

 そんな、理論が理論で成り立たないような、理論の混沌を人間は甘く見すぎていた。己の欲望、自己満足のためにこの世界を利用しようとしていた彼らは、この世界の現実を見て愕然としたという。

あまりにも、不完全でアンバランスなこの世界に。

それを見て彼らはこう言ったと言う。

「あぁ、これがすべての世界か。」

と…。

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■プロローグ / Prologue

 2078年。反重力の研究が進み、今まで相対性理論によって不可能とされていた、時間の圧縮(つまり、四次元空間を人工的に発生させること)が可能になった。具体的な内容としては光を反重力により極限まで遅くすることが可能になった。
 要するにこの装置がある中では歩くだけで、四次元空間に入れてしまうのだ。一種のタイムマシーンと同じものである。

 ―― アルファゲート(ALPHA―GATE)

 人々はこれをそう呼んだ。
 2076年の段階で発表はされているので、知名度はそれなりに高いのだが、現在は研究が滞っている。理由は言うまでも無く、危険すぎるのだ。
 今現在では、この装置の時間の流れを細かく制御することは出来ない。つまり、大雑把な時間設定しか出来ないのだ。ということは、下手をすれば現代版神隠しにもなりかねない。
 もうひとつ…危険である理由はもうひとつある。それは戻れない片道切符である可能性があるのだ。時間を戻るという動作は自然界の必然性の中で行われる。つまり、過去に未来から来た事実が無ければならないが、そんな事実は過去に無い。
 つまりは過去や現在、未来はパラレルである可能性があるのだ。その中では、歴史すら簡単に変わってしまう。正確には歴史が変わるのでは無くて、自分たちとの世界とは似てるようで似てない別の世界に行ってしまうということだが。
 そんな危険な装置を作ったは良いが、検証が出来ずに現在まで開発が滞っているというのが現在の状態だった。

 そんな中、人体実験が行われることが決定した。
 人体実験といっては人聞きが悪いが、簡単に言うと人間を四次元空間に送る実験である。というのも、今までは、動物での実験でしか行っておらず、それなりの成果を挙げているのだが、人間大の大きさのものについては未だかつて送ったことが無かった。
 何故このことが決定したかというと、研究委員会の会議の出来事である。

「これでは研究が進まない!何とかして、用意してくれないか!」

「無理だ。この研究にむやみに一般人を採用することは出来ない。」

「じゃあ、どうすれば良いんですか!完成まで、あと少しだと言うのに…。」

「無理なものは無理だ。まあ、お前さんが実験台になるというなら別に構わないが…。」

「い、いや…ですよ!あんな風になりたく無い!」

「だろ?それと同じことを一般人にやらせる訳には行かないんだよ。」

 何やら、二人の男が話している。
 二人はおそらく、この「アルファゲート」を開発・研究している研究員の代表者とそれを管理する部長的な存在の人物であろう。その二人が、二人そろって「アルファゲートの実験には参加したくない」ということを言っているのだが、その理由は単に前述の理由だけが原因ではない。

 それは動物での実験の時であった。 当時、その実験は動物の中ではもっとも人間に身近で、もっとも実験に使いやすいと言われる、サルを使って行われた。

 結果はというと、先ほどの会話から察すれるように結果はふるわしくなかった。逆にいえば、最悪の結果になってしまっていた。

―― 即死だった。

 反重力制御のバランスが崩れ、制御できなくなった力が、非常に大きなエネルギーとなり、ある一定の部分に強力に加わった結果だった。
 反重力は重力と同様、すべての方向に働く作用があるが、その分、大きなものの全体に均一に反重力を加えることは非常に難しいのである。

 今回のものはその問題点を解消した改良バージョンであるが、信頼性は100%ではない。
 否、人間の作ったものに元々、100%は包容されていないのだ。つまり、人間が作ったものである以上、完全なものは不可能ということである。

 開発者たちもそれを知っていた。それを知りえた上で、前回の失敗を払拭するために、自分の失敗を成功で収める為に、開発者達は今回の実験をすることを考えた。
 が、しかし、その「死」という大きなリスク前には、実験に参加するものなど居るはずが無かった。

「だれか、居ないのかね!」

男が叫んだ。

「無理を言うな。そういうんだったら、お前がやれ!」
「私は今回は辞退させてもらうね。私だって命が欲しい。」

 そうだそうだという賛同者の後にブーイングが続く。
 もう、かれこれ、4時間同じことを続けている。そろそろ、この実験はやらずに終わってしまうと参加した男達は思っていた。

そこへ・・・。

「私がやります!」

希望者は現れた。

一つの声と共に…

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