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■ALPHA-GATE

イントロダクション
プロローグ
1/時間を超える機械
2/失敗とその成果
3/不明な世界
4/一人の少年
5/私に似た女
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■第4話 / 一人の少年

 階段を下りる。階段はただひたすらまっすぐ続いているのだが、先は暗く出口は見えない。所々にご丁寧に蝋燭が確保されており、決して暗くは無いが、光源が蝋燭の火のせいで光が揺らぎ、これがまた良い不安感をかき立ててくれた。
 階段自体は石造りの古めかしいもので、一段一段があまり大きな段差では無かった。たとえるなら、神社の長い階段が一番正しいのではないだろうか。ただ、先が見えないだけに神社の階段より精神的に疲れそうな気がしなくもないが。
 どこまで続くんろう…。
 もう、1000段は下りただろうか。後ろを見てももう自分の入ってきた入り口はもう見えない。ただ、コツコツという靴の音だけが響きわたる。洞窟状になっているだけに反響は良く、それだけでまだまだ長い事を実感してしまった。反響の時間が長かった。要するにやまびこの原理である。遠ければ遠いほど帰ってくるのに時間がかかる。洞窟の場合は自分の近くも反響するので、どれだけ続くかが重要なのだが。
 聞いた感じ、1km以上はありそうな勢いである。階段を1km…。今でさえ疲れてるのに、これから先まだこんなにあると思うと気が遠くなる。だが、自分のあるいて来た感覚からするともどるのにも同じ程度かかりそうな予感がする。

 戻りの1kmと行きの1km。しかも、戻り側は登りである。考える必要も無かったかもしれない。どうせ、もどっても意味が無いのである。こうなったら、行くしか無い。女の意地を見せてやる。

 コツコツコツ──

 長々と続く、階段を降りていく。やがて、先の方に小さく、何か見え始めた。

 なに…あれは? 出口に見えなくないけど、空洞にはなってなさそう…。

 小さなものは目の先に小さく、暗くなっていた。確かに空洞にも見えなくは無いが、それならば蝋燭の火の揺らぎに応じて明るさが変わって見えるはずが無い。事実、遠くのそれには小さな蝋燭に応じて明るさが変わっていた。

 扉…かしら。

 徐々に近づくそれを観察しながら、答えを出してみる。
 それと同時に不安も募る。しかし、不安ばっかりだ。ここは未知の土地。いや、土地とも言えない不毛の地だ。今まで、誰一人訪れたことが無い土地。そうであったはず。しかし、光の扉、白い霧、城の残骸、そしてこの階段。どれを取っても人工物としか考えられない。ましてや、この蝋燭なんぞ、本物を見たのは初めてである。ここではなく、私たちの世界で今より過去、そしてその時代の地球に何らかの関係がある生物が…私より先にALPHA-GATEと同じものを作り出してしまっていたのか。

 怖いな。

 率直な感想がこれである。ALPHA-GATEはあくまで、この世界に移動するためのものではない。元々は時空転送、いわゆる瞬間移動やタイムマシンを実現するために作られたものである。
 それを、それ以上のものをまだ蝋燭が普通に使われてた時代。つまり、私の生まれる50年〜200年前程度に地球人以外に作れた生物がいたのだ。ただし、もしかすると蝋燭の技術を復興したあとの私たちが、ALPHA-GATEの改良版を使い、ここに来たのかもしれないが。

 まあ、どちらでもかまないんだけどね。少なくとも、今の私たちとは違うんだし。

 今の私たちではない生物である以上、私たちと考え方が違うのは間違いない。たとえば、世代の差で通じる話題が違うように、生きてる世界が違えば当然ながら考え方も違う。だから、どこの誰だろうが結局は怖いことや不安になることには変わりないのである。

コツコツ……ドン…ゴスッ!

「痛──!」

 足をてくじいてしまった。あまりにも長すぎた為に考えごとに更けすぎて、足下が階段だったことも忘れてしまっていたようだ。
 しかし───今のは結構痛かった。
 最後の1段しか無い階段に思いっきり、左足から自然に階段だと思って足を下ろし、不安定に着地してしまい、そのままバランスを取ろうと右足を思いっきり、前に出そうとして、足を引っかけてしまった。そのまま倒れていく中で、右足は結局出せず、左足も動かなかったので、左足が不自然に前へとグキッ!!とやってしまったのである。
 少し、足を触ってみる。

「痛っ」

 やっぱり、少し痛い。歩けなくは無いけど、さすがにこれで階段を降りるのは辛い。かと、言ってここにしばらくいるわけにいかない。

「あ…」

 どうしようかと考えた時である。今まで考え事してて忘れていたが、扉のような見たのを思い出した。そして、その扉は目の前にある。と言うことは、扉の前まで来たからさっきコケそうになった訳か。なさけない…。

 私は扉を開ける。扉は二つの扉を同時に開く開き戸になっており、扉は重く体重を掛けてゆっくり押す。
 中は広くなっているようだった。ただ、広すぎるからだろうか、真っ暗で中がどうなってるのか分からない。少なくとも、これより先に階段はないようだ。

 ゆっくりと進む。さっき、通路の蝋燭パクったお陰で周りが見えないことは無かったが、自分の周り以外何も見えなかった。

「お姉ちゃん、どこから来たの?」

「!!!」

ザッ──
 びっくりした。瞬間的に身体が大きく後に立ち退いた。そして、横を見る。
そこには──
 少年がいた。
 少年の髪は白く美しい銀髪。空の無い世界のその白はまるで銀色の月の様にキレイだった。身長は私の1個分下。民族衣装の様な服装であるが、決して古くさくなく、むしろ未来を思わせる服装をしていた。

「君、なんでここにいるの?」

「…。今のボクには言えない。まず、お姉ちゃんから自己紹介してよ」

 あっ。まあ、言われてみればそうか。自己紹介してない人なんかに自分の秘密なんて言えるわけが無いか。

「私は緑川朝夜。2076年の地球からここに来たのよ。あなたは?」

「へぇ。ボクはアラストロフィ・ローライド。長いからローライドで良いよ。どうせ、この名字は他に無いからね」

「ローライド…?」

 その名前には聞き覚えがあった。いや、単なる偶然かもしれないが、何かの本かなんかで読んだ覚えがある。確か、有名人ではあったはずだが、何だったかは…。

どうせ関係ないことだろうけど。

「お姉ちゃん、何か言った?」

「いや、なんでもないけど…」

「ところで、あなたに質問なんだけど、どうしてここにいるの」

「それは…それは使命かな」

 男の子…、いやローライドはその質問をした瞬間、浮かない表情を視ながらそう答えた。何か寂しそうなその顔が過去に何か合ったことを語っていたに違いない。ここにいる理由。そして意味。それらが複雑に関係した何かの因果関係……。それが目の前にいる人物の存在理由。そして、私の今後の存在理由にもなるのであろう。
 自分を照らし合わせて考えてみればここまでに何人のこういう人を“私が作り出してきた”かを考えさせられる。一人の人を良くするために犠牲になってそれを支え続けた人たち。スタッフといえば聞こえは良いが実際はした働きであるには変わらない。そして、いつの時代もその人たちは表に出ることなく、そして歴史に葬り去られていた。

「まあ、そんなこと良いとして、お姉ちゃんに伝えなきゃいけないことが一つある。まあ、これを伝えたところで僕には何の関係もないんだけど、さっきもいったように使命だからね。伝えないといけない」

 意味ありげに言うと一枚の切れ端を渡してくれた。古くて一部が破れている。和紙のようなさわり心地ではあるが、和紙とも違う。そこにはなにやら、読みにくい字でなにやら書かれている。「ALPHA-GATEはここより下の地下においてある。故障していたので、直しておいた。感謝しろ若造。」

 若造? いや、確かに私は若造ではあるけど、これ書いたの何歳? というか、なんて「ALPHA-GATE」の名前知ってるの? えっと、私が勤めてた研究所の誰かの未来かな。
 何故、その一言に尽きた。これをなおしたのは文体から見て少なくとも年相応の人であることは間違いないであろう。だが、それ以外は滅茶苦茶だ。第一、私が来ることを知ってる────第二、ALPHA-GATEの名前を知っている────第三、ALPHA-GATEに関する知識が十二分にある。そんなの、私以外に誰がいるのだろうか。というか、私か。

「ナニコレ?」

「紙」

「いや、そうじゃなくて」
「誰が、何のためにこれを託したのかってこと!」

「う〜ん。これより、深いところの地下にすんでる人だよ」

「その人、どんな人!?」

「えっ、って言われても会ったことはないよ。これもついさっき、渡されたんだもん。ドア越しに」

「ドア…越し…ですか」

 さすがに気が引けた。ドア越しにこんなボロい紙を渡してくる。しかも、今日ときた。相当なキチガイでヒッキーであることは間違いなさそうだ。そして、もう一ついえるのが、相当な記憶力の持ち主であること。
 要するにキチガイそのものですか…。いやだな、私だったら。
 ま、これを受け取ったからには嫌でも行くしかないかな。そうしないと現実世界に戻れなそうだし。
 文章を読む限り、もしこなかったら、ALPHA-GATEはどうなっても知らないぞと脅しをかけているような雰囲気にもとれる。と言うことは、行かなければ現実世界に戻れないどころか、一生涯ここにいることになるだろう。さすがにそれは嫌だ。仮に今から会いに行く人物が自分だとして、あんな人生になるんだったら、いっそのこと死んでしまえば良いと思った。
 まあ、良い。死ぬよりマシだ。

「わかったわ。地下の行き方教えてちょうだい」

「…。地下への入り口ならあそこだよ。ねぇ、お姉ちゃん、さっき何と戦ってたの…?」

 ローライドが右手で指さし、その方向を向いた。向いた方向には小さな金属だと思われるものでできている扉が一つ。まるで、闘技場の大扉や牢獄の扉の質感を思われる質感をかもし出しているが、大きさは両者ともまるで違う。大きいとも言えず、逆に小さいとも言えない大きさだった。遠目で見ていてなおかつこのホールが大きいため何とも言えない。

「ありがとう。さっき何と戦ってたって? それは、亡霊」

「亡霊? よくわからないけど、僕はここでお別れ。また、違う人を待ってなきゃいけないから」

「そう。じゃあ、その人にもよろしく」

「うん」

 ホールを後にする。扉の前まではおおよそ200mと言うところだろうか、扉自体は予想よりは大きくなく、大体自分の身長の2倍あるかないか。2m50cm程度というのが妥当なラインであるかもしれない。遠くで見たとおりの頑丈な扉であるが、取っ手が付いており意外と簡単に開いた。これもあの紙切れ野郎(野郎かどうかは知らないが)の仕業だと思うとちょっと頭にきた。
 なんか、すごく良い作りしてるじゃない。
 少し起こりながらも、スムーズに動く扉を横目に地下へと向かった。

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