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■ALPHA-GATE

イントロダクション
プロローグ
1/時間を超える機械
2/失敗とその成果
3/不明な世界
4/一人の少年
5/私に似た女
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■第3話 / 不明な世界

 私は良く分からない世界にいた。

―― ここはどこだろう。

 ああ、私は何故ここにいるんだろう。

 周りの空間が歪み、時より自分の形すらも分からなくなる。周りは見たこともない風景がものすごいスピードで通り過ぎていったと思うと、自分が良く知っている風景がすごいスローペースで流れて行ったりもした。
 更には、映画の如く振り向くと景色が変わっていたり、ついさっきまでの自分が映っていたりもしていた。今、自分が何歳なのか、そしてここは何処なのか。それすらも分からない混沌に私は存在していた。

 少なくとも、自分の中にある確信はこれがあの「ALPHA-GATE」が生み出した空間によって作り出したと言うことだけであった。

「ということは、四次元空間か。」

 でも、おかしい。四次元空間は一般相対性理論では長時間存在してはならないはず。私の設計でも「ALPHA-GATE」はほんのわずかな時間の揺らぎを利用して四次元空間にアクセスする設計であったはずであった。しかも、その感じる時間は1秒も存在しなく、ほんの一瞬の間に四次元空間を抜ける感覚であったはずだった。

 何故かというと時間が存在していないからである。つまり、四次元空間の中では時間が止まって居なければならない。

―― 時間の混沌

 昔、本で見たことがある言葉浮かんだ。
 「時間の混沌」。それは、四次元空間独特現象。
 四次元空間はすべての時間が、一つの空間の中に存在している。ということは、この世界が始まってから、終わるまでのすべての時間が一つの空間の中に存在している。つまりは、存在しない空間すらも空間の中に含まれている訳である。

―― 無い空間

 それが、何を意味するのかは分からないが、少なくともそこに自分が巻き込まれたのは間違いなさそうだった。
 そうじゃなきゃ、この自分の目の前に広がっている世界があるわけがない。
 つまり、ここは私たちのいた世界ではないのであろう。

「ということは、ここは四次元空間ではない…?」

 さて、そこまではなんとなく分かったのだが、ここからどうやって向こうの世界に帰ろうか。
 まさか、「ALPHA-GATE」がここにある訳が無いし、車や列車なんかは論外であろう。恐らくどんな乗り物も存在していないのだろう。事実、周りは殆ど真っ暗の空間で、遠くの空のような場所に、死に際の回想のように風景が流れているような感じである。
 例え、時代の流れで乗り物を見たとしても、ここは天から地を見る神が存在している天界ような場所である。そんなもので帰れる訳が無い。

 さて、どうするか。
 向こう側に光がわずかに見えるが、あれは何かの風景の一部であろう。
 仕方ない、まだ時間はたっぷりある。何しろ時間という概念すらないのだ。

「まあ、とりあえず、駄目もとで行って見るか…」

 もう、希望が在るか無いかなんて関係なかった。
 できそうなものなんでもやってみる。それを実行するしかなかった。

しかし、

 何で、ここにいるんだろうか。まだ、少ししか歩いていないのに。
 私は大きな光の扉の前に居た。扉のシルエットは分かるのだが、どういう構造になっているのは全く分からなかった。しかも、あまりにも明るい光のせいで外すら見えない。
 もしかしたら、外に太陽があって、自分は暗いところに慣れてしまったせいからかもしれない。そして、外には自分の居た時間(とき)があるかもしれないとの希望が心を抱いた。
 希望が広がる反面、同時に恐怖も頭を過ぎった。
 ここに行ったら、二度と自分の世界(ばしょ)には戻って来れないのではないか、自分自身すらも失ってしまうのではないだろうか。
 自分に選択肢はこれしかない。いや、他のものも見えるが、全てが刹那。一瞬瞬きをすれば次の瞬間違うものに変わっている。だが、これだけはいつまでも存在しつづけている。
 結論から言うと、私はこの大きな扉(ゲート)をくぐらなければならない。だが、中は全く見えない光の世界である。
 人間は自分の理解できないモノを恐れる。その代表例が幽霊だ。現在ではその存在が生体エネルギーによって出来ていることが確認されているが、今から70年前は恐怖の対象として存在していた。

 そして、私はアルファゲートというものの中で、それに該当するものを見つけた。
 それがこれ。しかし、進まなければならない。進まなければ先へと進めない。戻ることすらも不可能になってしまう。いや、戻ることは可能であろうが、それはアルファゲートを使って、ここに助けに来てもらわなければならない。
 それはあの状況からは無理なことは明らかだった。

 そして、決意を決めた。
 私は意を決して前へと歩き出した。

 自分が光に包まれていく。
 一歩、踏み出して光に包まれた足は、まるできれいさっぱり消え去ったように見えなくなる。慌てて、戻すと普通に足がそこにあった。自分の常識を覆すようなその代物に私は驚いた。

――これは光ではない

 直感的にそう思った。
 光だとするとあまりにも強すぎるのだ。もし、光だとするとざっと太陽が1屬望箸討觚のざっと数千倍。もし、そんなのだったら、私なんか焼死してしまう。
 つまり、これはそれ自身が光る霧のようなものであろう。しかし、今、自分がいる空間には一切存在していない。
 何か、こちらの世界と向こうの世界で違うものがあるのだろうか。

 凄く興味が出てきた。私はこれでも一応科学者である。勢いだけで行動するお前の何が科学者だ〜との声も聞こえそうだが、それでも一応は!科学者といっておきたい。
 私はもう戸惑いも無かった。

 いまだに煌々と光り続ける扉に足を踏み出した。
 徐々に光に包まれていく体。足、手、下半身、上半身、最後に顔が光に入っていった。
 中に入ると一面白い霧状のもので埋っていて周りが全く見えなかった。しかも、自分の顔以下全ても白くて全く見えないのである。上半身は勿論、下半身も感覚はあるのだが、存在しているかどうかは怪しいぐらい全く見えなかった。
 その中でも、たった一つの希望と好奇心を抱いて私は進んでいた。

--

 もう、入ってから暫く立つ。
 出口はおろか回りも一向見えない真っ白な世界。
 自分は今何処にいるのか、ちゃんと下があるのか、更には自分自身は本当にここにいるのか。
 全てが不安だった。
 まるで、何も無い空にふわふわと浮かんでる感じ。
 さみしくて、孤独感でいっぱい。
 もう、数時間も持たなそうだった。
 それでも、探し続けた。ここにあるであろう、出口を。そして、誰かを。それが無謀な試みだとしても、私は探し続けた。探し続けるしかなかった。
 そして、もうどれくらい経っただろうか。
 やっと、この霧状の光源が和らいできた。もう、自分の体もうっすらだが見える。そして、全体が徐々に暗くなっているような気分になる。
 この近くに何かあるのだろうか。それとも出口が近いのであろうか。
 どちらにせよ、今のこの寂しさから開放してくれる"何か"はありそうだった。

 今まで重かった足が急に軽くなる。そして、足取りは今までのどの歩みより速く歩いているように感じた。それだけ、この変化に期待を掛けていると言う事だろうか。
 だが、期待は時に大きな裏切りをする。過度の期待は厳禁だ。自分自身すら失うこともあるのだから。
 期待半分、不安半分でありながら、寂しさから逃れたい一心で歩いていた。
 そして、30分が経っただろうか。しかし、もう時間の概念すらないここでは、時計もさっきから一切動いていない。
 だが、ここは四次元空間特有の時間の歪みが無いのか、着実に前へ進んでいる。それだけでも、十分安心できた。

 しばらくすると、城の城壁のようなものが見えてきた。
 だが、もう半分崩れかけていた。まるで廃墟だ。本当にこんな所に人がいるのだろうか。
 人?何故、私はそれを期待するのか。今までのALPHA-GATEの実験で人間は一度も送られたことが無いハズだ。
 そんな希望の欠片もここにはあるはずはないのだ。良くても、この城の資料がある程度。悪かったら…、壁だけで城自体は何処にも無いはず。
 そんなもの期待している自分が馬鹿馬鹿しい。気が狂ったか。
 まあ、そんなことは良い。さっさと、ここから出ることを優先にきっかけとなるものを探そうか。

 とりあえず、壁を伝ってみる。
 壁は石レンガ造りでもう数百年が経っているような古さだった。レンガは古く中には触っただけで崩れてしまうようなものも多数あった。
 まるで、世界が死んだ様な静かな中、壁を伝って歩く。

 …長い。

 一向に壁が切れない。もう、どれくらい歩いただろうか。
 ゆうに二キロ。いや、それ以上か。城の壁は左に円弧を描き続けている。だから、いつか入り口のようなものが見えるはずである。
 しかし、長すぎでないのか。
 もしかしたら、入り口が無いか隠されていて、私はその周りを回っているだけなんだろうか。
 とりあえず、一つレンガを持ってきて、縦においておく。
 そして、歩くこと二〇分程度。

「やっぱりね…。」

 目の前にあるのは縦に置かれたレンガ。

 なら、壁かなんかに入り口のヒントみたいなものがあるのだろうか。
 とりあえず、色々なところを調べてみる。
 何か色々書かれているのだが意味が分からない。

「Ous avaerlence heace.raumuv em. Ymwous re heacewenle em.」

「……」

 文法は英語に若干似ている。まあ、アルファベットしか使われていないことから考えるとだが、見たことも聞いたことも無い単語ばっかり並んでいる。
 しかも、細かい文法は英語とは全く違うようだ。
 とりあえず、触ってみる。
 だが、当然ながら何もおきない。
 暫くして、色々いじっていると文字の書いてあるプレートの下が若干くぼんでいるところを発見した。

― 押してみる。

 レンガはコトッと音を立て、軽い抵抗感と同時に向こう側に落ちた。

「(ゴゴゴゴゴ)」

 同時に鈍くて低い地響きがなる。音が遠い。反対側だろうか。
 音が結構遠いところから聞こえた。しかし、遠すぎないだろうか。もう、二十キロ先、 いやもっと先かも知れない。とにかく、ものすごい遠くでそんな音がした。
 なんだろう。なんか、徐々に大きくなっている気もしなくも無いが。

「……!」

 間違い無い。地響きはまるで生き物のような動きで、なおかつ、ジェット機以上の速さで迫ってくる。

 まずい!
 そう思った。自分の鼓動がどんどん早くなっていく。

 さっきのブロックは何かのスイッチだったのだろうか。
 だとすると、今動いてるのはトラップか何かだろう。それならば、スイッチがあるここまでは確実に来るであろう。

― 離れろ

 その言葉が頭を過ぎる。
 さっきまで、漠然と思っていたその言葉。
 それを言葉としてではなく…意味として今理解できた。それと同時に拍車を掛けるように心だけが、暴走していいく。

 焦るな私。
 そう言い聞かせるが、心は言うことを聞く気配すらない。このままだと私があのトラップに

 急げ、急げ、急げ、急げ、急げ。

 そう、急かすようにどんどんと。そして、同時に呼吸もそれに答える。

 逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ。

 アタマはそう命令する。ココロはどんどん、カラダを応援して何とか、動かそうとする。でも、カラダは動かない。
 まるで、何かに縛られたように。
 時間すらも、止まったようだった。

 その間も、どんどんと地響きは近づいてくる。
 さっきは地響きしか聞こえなかったのに、今はその影響だと思われる地を這う何かが見える。いや、這うのではなく、伝ってるように動いているように見えるというのが正解か。
 もう、あと少し。あと数分後には私はどうなるのか。そして、何が起きるのか。
 全く予想がつかないまま、もう、一キロもない、ほぼ目の前という距離まで、何か線のようなものが見えていた。周りは砂埃…いや、雪煙だろうか、何か白っぽい煙を被っていて何があるのかはわからない。

「(もうだめなのかな…)」

 自分が今までしていたことがフラッシュバックしてくる。これは死の予告なのか。それとも誘いなのか。どっちにしろ、もうだめなことは間違いなさそうである。

 あと、100メートル。
 こんな近くに来ても未だに何でこの煙が出ているのか分からなかった。煙は見える。だが、その中には何も見えないのだ。一体何が起きてるのかさっぱり分からなかった。

 覚悟した。もう逃げられない。目をつむって、覚悟を決めた。

 その瞬間。

 白い煙に巻き込まれる。
 そして…

 ゴゴゴッ!
 ものすごい音が聞こえ、自分の近くで何かが起きていることは分かった。が、自分には細かい埃のようなものがぶつかるだけで、何も起きない。

「…?」

 しばらくして、周りが明るくなったと思うと目を開けてみた。

「階段?」

 目の前には地下へ向かう大きな階段があった。
 全体は石造りで非常に古いと思われる作りをしており、辺り一面は湿ってもいないのに雫が落ちている。まるでどこかのホラー映画に出てきそうなそれがそこにあった。周りの何も無い様子からすれば時代錯誤なそれは、この状況ともなるともう普通に思えてくる。なにしろ、時間すらも空間に存在する世界だ。時間というモノを超えて物があってもおかしくないだろう。
 しかし、不思議だ。誰が何の目的でここにコレを作ったのか。全く予測がつかない。何かの罠だろうか。それとも、何らかの意図があってここに設置してるのだろうか。少なくとも、様子から見て私を拒んでいるようには思えないが。

 先を覗いてみる・・・見えない。

 まあ、当然であろう。中は薄暗い蝋燭の光で照らされているが、わずかな光だ。それぐらいの光では、この長そうな階段の奥はみられるわけがない。

 どりあえず、相手側は歓迎してくれるみたいだし行ってみようか。何より今の状況を打破するには、行動することが先決だから。

「あ、あれ?」

 一歩、前へでようとしたその時である。

──歩けない・・・!?

 ああ、さっきの地響きのせいか。すこし、私はビビッてしまったらしい。まったく、私らしくない。これくらいであのALPHA-GATEの設計者の名が張れるものか。
 とは言っても仕方ない。心でなってしまったものは今更どうにかなるものではない。私はそこでしばらく休むことにした。

 何も無い大地に片方の足を伸ばし、手を後ろにそえ、もう片方を膝を立てて座る。
 まるで、夢世界にいるようだ。周りには古い城壁に地下室へ向かう階段、それなのに地面は全くの無機質でまるで大理石の床に座ってるような感覚があり、遠くを見ると白いもやが見える。何もかもが不釣り合いでアンバランス。なのに今は普通に感じている。まったく、慣れとは恐ろしいものだ。まあ、単純にここが四次元空間の狭間だと割り切っているせいもあるかもしれないが。

 もう、十分であろう。一通り見回したら緊張がとれたようだ。今はもう普通に歩ける。よし、行くとしようかな。
 如何にも滑りやすそうな地面から立ち上がり階段へ向かう。足取りは軽い。これなら、たとえ長い階段でも十分について行けそうだ。

 そして、地下へ向かった。

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